吐き気やめまいも… 子どもに増える「IT眼症」とは?

文部科学省によりますと、去年、視力が1.0未満の小・中学生が過去最多となりました。
その原因のひとつとして、スマートフォンやゲームなどの利用時間が増えていることがあげられています。
最近では、視力の低下だけでなく頭痛や吐き気などの症状を訴える子どももいるといいます。その実態を取材しました。

■止まらない小中学生の視力低下
大阪市阿倍野区にある大手メガネショップのJINSでは、最近「あるもの」の売り上げが上がってきています。
「こちらが当店ご用意しているキッズとジュニアのフレームのタイプです」(店員)
小中学生以下を対象とした「子ども用のメガネ」。
昔と比べてサイズやデザインも豊富になり、最近ではパソコンなどから発せられる「ブルーライト」をカットする子ども用のメガネも増えてきているといいます。
「ブルーライトがよく出ているものとしてスマートフォン、パソコン、液晶テレビのほかにゲーム機からも強く出ていると言われていて、親御さんがストップをかけるため使われる。最近では海外の方のお土産として、キッズ用のものを買われる」(店員)
スマートフォンやタブレットなどが身近になり、子どもが映像に接する機会も増えているようです。

<街頭インタビュー>
Q.お子さんはテレビとか映像とか見るのは好き?
「好きです。(NHKの)いないいないばあっ!とか、おかあさんといっしょとか」(母親)
Q.YouTubeとかタブレットで見せている?
「たまに見せています」
Q.どういうときに?
「電車の中とか、静かにしてほしいときにちょっとだけ」
「YouTube見せたりとかしています。YouTube Kidsとか、アンパンマンの遊べるアプリとか」(母親)

内閣府の調査によりますと、小中学生のスマホの利用時間は年々増えています。
また文部科学省の調査では、視力が1.0未満の小中学生の数も増加傾向にあります。

■「IT眼症」とは
こうした状況に警鐘を鳴らす人がいます。兵庫県姫路市の眼科医で、大学の客員教授も務める田淵昭雄医師です。
「iPadとかゲーム機とかスマホ、中学生みんな使ってますよね。それによる被害がないということは絶対ない」(川崎医療福祉大学 田淵昭雄医師)
最近では「視力が落ちる」という症状にとどまらない子どもも増えてきたといい、日本眼科医会はこう呼んで注意を呼びかけています。「IT眼症」です。
「目の調節障害ですよね。それに引き続いて自律神経異常です。自律神経というのは、交感神経と副交感神経。それのアンバランスが出てくる。変なときに興奮したり、寝ないといけないときに眠れないとか。そういうふうな身体的な異常も伴ってくるのが『IT眼症』ですよね」(川崎医療福祉大学 田淵昭雄医師)

■パソコンゲームに熱中…体に異変
相田亮太さん(仮名)岡山県倉敷市に住む中学2年生です。
Q.何やってる?
「PUBGっていうゲーム」(相田亮太さん)
Q.どんなゲームが好き?
「銃で戦うみたいな」
Q.おもしろい?
「おもしろいです。撃って倒せたときのうれしさ」
1年ほど前にパソコンゲームにはまり、いまでは帰宅するとほぼ毎日パソコンに向かっています。
Q.1日どれくらいする?
「1日1時間とか。休みの日は2時間とか」(相田亮太さん)

最近では敵をいかに攻略するかの参考にするため、タブレット端末でYouTubeの動画を見ることも増えました。
しかし、2か月前から体に異変を感じるようになった相田さん、先週、眼科医の田淵医師の元を訪れていました。

(田淵医師)「ゲームしてたらどうなる?」
(相田さん)「吐き気がする。体が熱くなる。頭が熱いというか、熱いのに伴って、ぐらっと気分が悪くなる」
そこで、光の量を調整する瞳孔や水晶体の動きに異常がないか、検査することになりました。その結果は…
(田淵医師)「やっぱり過緊張になっとんのかな。目の緊張状態。こっち側はちょっと赤い」
(相田さん)「赤いとどうなんですか?」
(田淵医師)「周波数が多い(=負荷が大きい)」

検査では、ピントを合わせるときに目にどれだけストレスがかかっているかがわかります
相田さんの場合、近くを見る時も遠くを見る時も濃い赤色になっていて、焦点を合わせるときに負荷が大きく、目に疲労がたまっていることを表しているといいます。正常な人の場合は、赤色はほとんど見られません。

■リアルになった映像が負担に
田淵医師は、最近のゲームの映像がリアルになったことも目に負担がかかる要因になっていると考えています。
「単に目の調節だけではなくて、3Dにするための機能を働かせていますからね。それだけ疲れやすい」(川崎医療福祉大学 田淵昭雄医師)
「IT眼症」を治すには、画面を見る時間を減らすことが一番だといいます。
「50センチ離れてしっかり見られるような字の大きさにしなさい。あとは50分以上は見ないように」(川崎医療福祉大学 田淵昭雄医師)

この結果を受けて、検査を見守っていた相田さんの父親は、これを機に今まで以上に気にかけていくといいます。
「栄養ドリンクを飲みながら、それでもゲームをしようとしていて、それで異状に気づいて。今まで親として口うるさくは言っていなかったんで、ゲームの時間とか親としても把握して、休みを取るように教育していこうかなと思いました」(相田さんの父親)
「ゲームやばいなと実感して、時間を減らしていこうと思う」(相田亮太さん)
Q.できそうですか?
「まあ、ゆっくり時間をかけて」

楽しみが増えて画面を見る時間が増えた分、目を労わる時間も必要なようです。

※以上の内容は「【特集】吐き気やめまいも… 子どもに増える「IT眼症」とは?」を引用しています。