資料
長時間スマホで「IT眼症」
■「ブルーライト」発する液晶画面、至近距離で凝視すると…
東京都内の小学5年男児(10)は帰宅後、目から20センチほどの至近距離でスマホを持って友人とオンラインゲームを楽しむ。
2時間近く熱中することもある。男児の母親(44)は「学校の授業でもタブレット端末を使う。目を酷使して健康に影響がないか心配」と話す。
兵庫県姫路市のツカザキ病院小児眼科外来では最近、目の疲れや痛みを訴える小中学生らが増えている。
同病院の小児眼科医で、川崎医療福祉大名誉教授の田淵昭雄さんによると、大半がスマホや携帯ゲーム機などの長時間使用によるIT眼症だという。
IT眼症とは、至近距離でIT機器の明るい液晶画面を長時間凝視することで、目の疲れや頭痛、首や肩のこり、不眠などの症状が出ること。イライラなど心身のストレスを抱えることもある。
IT機器の画面の光源はLEDが主流で、目を刺激する「ブルーライト(青色光)」を発している。画面との距離が近いほど、夜間や暗い場所ほど影響が大きいとされる。スマホやタブレット端末は、パソコンに比べて画面が小さく、顔を近づけて見がちだ。
■幅広い世代で深刻化
小中学生や高校生のインターネットの利用率は年々増加傾向にある。
内閣府が2月に発表したネット利用環境の調査では、平日の1日に5時間以上利用する小学生は5.1%、中学生11.6%、高校生は26.1%だった。
成人にも影響が広がる。化粧品大手ファンケル(横浜市)が2015年11月、20~60代の男女1万人を対象に行った調査では、「目の疲れを感じる」とした人は86%に上った。原因は、全世代で「スマホやパソコンの利用」が最多だった。
東京都内の会社員(41)は、就寝前の暗い寝室で、動画投稿サイト「ユーチューブ」のゲーム動画をタブレット端末で見る。「目の疲れがひどく、寝付きも悪くなった」と話す。
田淵さんは「IT機器が急速に普及し、場所や昼夜を問わず利用するようになった。IT眼症が幅広い世代で深刻化している」と指摘する。
■背景の色を白から黒に…文字の色は黒から白に…
一方、IT機器の利用環境を改善する動きも出てきた。ユーチューブは3月中旬、アップルのiOS版でも画面の背景の色を白から黒に変更できる機能「ダークテーマ」を追加した。文字の色は黒から白になる。設定前に比べ設定後は目の疲れを軽減できる。
グーグルなどの検索エンジンや、フェイスブックなども同様に変更できる。iPhone(アイフォーン)でも、調光機能のナイトシフトを利用できる。
パナソニックは8月、パソコン利用者のストレス状態を内蔵カメラでチェックできる法人向けのサービスを始める。使用時間もグラフで可視化できる。150社以上から問い合わせがあるという。
IT機器によるストレスの相談に応じている「九州インターワークス」(佐賀県)代表の古賀竜一さんは「タイマー機能を活用して長時間利用を防いだり、目に優しい調光や配色に設定したりするなどIT機器の利用環境の改善が必要」と指摘。目の疲れの軽減策としては「就寝前は利用を控えるなど生活習慣を見直してほしい」と助言する。
■IT眼症を防ぐポイント
・暗い場所でごろ寝しながらIT機器の画面を凝視し続けない。ブルーライトをカットするメガネも有効
・IT機器を使い分ける。電話はスマホ、メールやSNSのやりとりは大画面のタブレット端末やパソコンで。緊急的な用件以外は即時に返信しない
・画面から目を50センチ以上離す。連続使用は30分~1時間程度。適度なストレッチや休息を
・画面の明るさを暗くしたり、ナイトモード機能などで背景の色を刺激の少ない黒に変更したりする
(田淵さんや古賀さんへの取材を基に作成)
※以上の内容は「長時間スマホで「IT眼症」…目の疲れ・頭痛・不眠、小中学生も多く」を引用しています。
「近視だと老眼にならない」は誤解?
水晶体が老化で硬くなると、厚みを変えることができにくくなるため、まず近くのものからピントが合いにくくなる(イラスト/竹口睦郎)
「老眼」という言葉のせいで「高齢者がなるもの」と思い込んでいる人も少なくありません。
しかし、老眼の症状は30代から出始め、誰もが避けて通れません。
好評発売中の週刊朝日ムック『眼の病気&老眼がまるごとわかる 2018』では、その原因とメカニズムを、梶田眼科院長で日本眼光学学会理事の梶田雅義医師に取材しました。
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■人はどうして老眼になるのか?
「実をいうと、老眼は胎児期から始まっているんですよ」
そう話すのは、梶田眼科(東京都)院長の梶田雅義医師です。人間のからだの細胞は常に新しい細胞と入れ替わっていますが、老眼の原因となる眼の「水晶体」は、細胞の入れ替わりがほとんどない特殊な組織なのだと言います。
「水晶体が完成するのは胎児期です。それ以降、水晶体の調節能力はわずかずつですが弱くなり、日常生活に不自由さを感じる段階まで衰えると老眼を自覚するのです」
水晶体とは、カメラでいえばレンズにあたる部分です。非常に高性能なオートフォーカス機能をもっていて、見ようとする対象物との距離によって自在に厚みを変えてピントを合わせています。
水晶体を通過した像は眼球の奥の「網膜」に映し出され、それが視神経を通じて脳に送られることで「ものが見えた」と認識するのです。
ところが、水晶体は加齢によって少しずつ弾力性を失って硬くなります。それが厚さを変える力(調節力)を弱め、近くのものから「見えにくい」と感じ始めます。これが老眼のサインです。
もともと水晶体は、リラックスしているときには薄く、ピントは遠くに合っているものです。脳が「近くを見ろ」と指示を送ると、水晶体を支えている「毛様体筋」が緊張して縮み、水晶体がぐっと厚みを増します。近くを見ることのほうが、水晶体にとっては大変です。近くのものから見えにくくなるのはそのためです。
老眼はその後も進行します。水晶体が弾力を完全に失って、厚みが固定されてしまうと、ピントは一点にしか合わなくなります。それが60歳ごろです。
■近視の人は「老眼に気づきにくい」に過ぎない
近視・遠視・乱視にかかわらず、老眼はすべての人に起こります。よく「近視の人は老眼にならない」「眼のいい人は早く老眼になる」などと言われますが、梶田医師は「それは誤解」と言い切ります。
「近視の人はもともと手元にピントが合っているため、老眼になっても比較的手元が見えやすい。そのため気づきにくいだけです」
一方で、「眼がいい」と言われる遠視ぎみの人は、近くを見ることが苦手。さらに加齢で水晶体が硬くなると、より近くが見えにくくなるため、老眼に気づきやすいのです。(文/神素子)
※眼の病気&老眼がまるごとわかる 2018 (週刊朝日ムック)
※ 以上の内容は「「近視だと老眼にならない」は誤解? 知られざる老眼の仕組みに迫る!〈週刊朝日〉」を引用しています。